『岸田國士戦争劇集』出演者紹介

クラウドファンディング終了まであと3日2日!。100%達成を目指して、よりキャストに興味を持ってもらおうと思い、構成・演出:谷賢一による俳優紹介の記事を作成しました! 「どちらのチームを見ようかな」「どのキャストを応援しようかな」など、観劇やクラファン支援の際のご参考にして頂ければ幸いです。

(以下、文章全て谷賢一)

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初めに

今回、新型コロナウィルス感染症対策のため、完全に別の2チーム同時並行で稽古&本番を行います。最近ではコロナ対策のためアンダースタディやスイングと呼ばれる代役を入れるカンパニーが増えてきましたが、実はこれだけでは防げない事態があるんですね。

我々はいまだに稽古場でずっとマスク着用、最終リハーサルである場当たりやゲネプロでようやく外す……ということをしているわけですが、当然ながら本番ではマスクを外します。ここでもし出演者に一人でも感染者が出ると、本人が降板・療養しなくてはならないのはもちろんのこと、出演者全員が濃厚接触者認定となる場合があります(保健所の判断によります)。マスクをしないで、同じ空間で、距離を取らず会話をしていたわけですから、濃厚接触者になるわけです(観客はマスクをしてたり2m以上距離をとっていたりするので、濃厚接触者とはならない場合が多いです)。今の基準でも濃厚接触者認定をされると7日は隔離が必要になりますから、ほぼ公演中止は確定となります。

こうなった場合、小劇場劇団はひとたまりもないですから、どうにかしてリスク回避をするためにこのようなチーム分けを行なっています。これは出演者の安全を確保するためでもあるんですね。「自分が感染したとしても、安心して降板できる。出演できなくても、他のチームが穴を埋めてくれる」と思えば、無理をしなくて済む。ちょっと体調がおかしいぞ?と思ったらすぐ病院に行き、検査を受ける。「自分が陽性だったら公演中止で、おそらく赤字が何百万、あるいは何千万で……」というプレッシャーを抱えていると、「多分大丈夫」「いける」という間違った判断をする人が出てしまう可能性は自ずと高くなります。

ちなみにDULL-COLORED POPでは前回公演から出演者に対し、コロナ感染で公演中止になっても出演者が責めを負うことはない、罰金や違約金など金銭を要求されることがないことを、出演交渉の際に明記していました。今回はさらに一歩進んで、全員に対し出演契約書を作成し、コロナなどやむを得ない事情で公演中止になった場合でも稼働の実態に合わせて報酬が一部支払われるということを約束しています。これも出演者を守る意味がもちろん第一ですが、こうすることで「いざとなったら休んでいい」という安心を与え、観客を守ることに繋がるだろうという考えがあるからです。

DULL-COLORED POP では業界団体や保健所のガイドラインに従うだけでなく、『丘の上、ねむのき産婦人科』から医師の稲田美紀先生に感染症対策の監修を依頼し、小劇場劇団としては最も厳密な感染症対策をしていると自負しています。これに加えて出演者の心理的安全を担保することで、さらに安全が確保できる。そういう意味での2チーム制です。

とは言え、芸術的に意味のあるものにもしたいので、それぞれのチームに託した思いもあります。それについて少し触れながら、出演者紹介をしてみようと思います。

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赤組

出演者:阿久津京介、東谷英人(以上DULL-COLORED POP)、越前屋由隆、齊藤由佳、原田理央(柿喰う客)、ふじおあつや、松戸デイモン、渡辺菜花

このチームのコンセプトは「情熱」です。岸田國士は抑制された筆致で言葉をしたためた作家ですが、『動員挿話』『かへらじと』はいずれも、配偶者や親友、家族へ向けたかなり熱い情熱、端正な言葉の裏に潜むマグマのような思いが見え隠れします。赤組にはとりわけ情熱家を集めたので、胸に迫るお芝居をお届けできると思います。

普段の僕はやたらと俳優に叫ばせるのが好きですが、今回は多分あんまり叫ばせません。より深いところ、魂の奥底で煮えたぎる情熱を表現できたらと思っています。

一人ずつ紹介していきます。

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阿久津京介(DULL-COLORED POP)

前回公演『プルーフ/証明』を観てくれた人はわかると思いますが、こんなに感受性豊かな、思いに溢れた、あるいは暑苦しい男は今どきなかなかいません。「こんなに感受性豊かだと、きっと生きていくのつらいだろうな」と心配になるくらい情緒豊かな青年です。普通そういう人は精神的に不安定だったり粗暴だったりするのですが、彼の場合そんなことはなく、非常に礼儀正しく控えめという不思議なバランスを持っています。彼は命を捨てようと決意して戦場へ赴く青年を演じてもらいますが、非常に似合うと思います。おそらく戦争中、お国のため家族のためと思って死んでいった青年たちも、阿久津くんのような純粋な魂と熱い感受性を持っていたのだろうと想像します。そう考えると胸が詰まる。ラジオドラマ『空の悪魔』にも重要な役どころで登場予定です。

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東谷英人(DULL-COLORED POP)

気がついたらもう12年一緒に演劇をやっています。同じ理想や夢を共有できる稀有な仲間です。金や採算やメリットの有無ではなく「面白いかどうか」を常に優先して考える人なので非常に信頼できます。また僕に対して物怖じせず「それは違うと思う」とか「わからん」とか言ってくれる貴重な友人でもあります。この年になるともう誰も自分にダメ出しをしてくれなくなるので、彼のような存在は貴重です。自分の横顔は自分では見れないということを、彼と『丘の上、ねむのき産婦人科』で学びました。今回の公演は今回の作品を成功させることも目的ですが、さらに長いスパンで、最終的に新作『岸田國士の戦争(仮)』に繋げ、当時の日本人や岸田がどのように戦争と対峙していたのか掘り起こすのが使命です。その良き併走者となってくれるでしょう。

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越前屋由隆

彼もオーディションで20倍か30倍の中を突破してきた猛者なのですが、前からお名前は聞いておりました。上演は観れていないのですが、2019年に三島由紀夫『わが友ヒットラー』でタイトルロールを演じて佐藤佐吉賞2019最優秀主演男優賞を受賞されています。でもまぁ見てみるまでわかんないもんな……と思ってオーディションで会ってびっくりしました。まず声がいいんですね。そして嫌らしい芝居をしない。非常に抑制の効いた、清明な演技をなさる。勝手にもうちょっとパリピっぽいと言うか、イケイケな人を想像していたのでいい意味で期待を裏切られました。あとお互い共通の趣味として機動戦士ガンダムにかなり詳しいということが判明し、早くその話をしたいと思っています。『ククルス・ドアンの島』、楽しみですね。僕は公開初日に見てきます。

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齊藤由佳

今回、座組最年少、22歳。それだけでも驚きですが、ほぼ演技経験なしという経歴ながらオーディションを突破した逸材です。大学で演劇と出会い、やってみたい……と思ったもののコロナの影響もあり思うように活動できず、悶々としていた。そんな中、昨年の『プルーフ/証明』のオーディションに来てくれて、非常に情感豊かに演じていたので経歴を質問したら「ほとんど舞台出たことないんです」という驚きの答えが返ってきました。演劇はセンスだけでなく技術や知識の芸術ですが、たまにこういうことが起こります。もともとめちゃくちゃ演劇に向いている、演劇の神に愛されているというようなことが。僕からお願いして今回のオーディションに来てもらい、最後まで割と出演歴のある方との一騎討ちになり悩みましたが、この才能に賭けてみようと思い出演を依頼しました。彼女の持つ瑞々しさが似合う役です。

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原田理央(柿喰う客)

やっと一緒にやれる!  この一言に尽きます。付き合いは実に深くて、2010年、もう12年も前にオーディションでお会いしていて鮮烈に覚えています。その後、単身ニューヨークへ渡り、2年間HB STUDIOにて演劇プログラムを終了。さらにその後ロンドンへも渡りRoyal Central School Of Speech And Dramaでも学ばれています。僕もイギリスの演劇大学で勉強したことが下地にあるので非常に共感するし、同時にこれがどれだけ大変な修行だったかということもわずかながら想像できます。帰国後再会し、飲み友達みたいな感じで何度か飲みにも行ったのですが、「これだ」という役に出会うまでなかなかオファーの声がかけられませんでした。今回の配役はバッチリだと思っています。NYとロンドンで学んだ演技術で岸田國士と戦う。楽しそうじゃないですか。

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ふじおあつや

彼もオーディションで強烈な印象を残した人です。指定テキストを読んでもらった後、あまりの上手さに僕が思わず「ど、どこで演劇を学ばれたのでしょうか……?」と尋ねたのが彼です。プロフィールに鳥の劇場(鳥取にある超カッコいい&面白い演劇拠点)での出演歴があったので、ははあ中島諒人さんの薫陶を受けたか、それならむべなるかな、なんて思っていたら直接指導を受けたことはないそうで、何でもコロナ禍の中、発表と稽古の場所がなくなることを憂いて同世代の俳優たちと稽古場を借りて、コツコツ稽古を続けていたそうです。読みが非常に正確で、かつ自分で自分をきちんと演出、デザインできるタイプの俳優さんだとお見受けします。こういう人とやるときは年上も年下も関係ないので、彼の知性と感受性と向き合いながら、では戦争に行く20代の気持ちとはどういうものか、考えてみたい。戦争に行く20代の気持ちは、もう40になった僕よりも、彼の方がよほど切実に理解できるでしょう。

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松戸デイモン

応募書類を見たときこう思ったわけですよ。「松戸デイモン。なるほど……松戸デイモン……」。僕は変な人とはなるべく会うようにしているので軽い気持ちで書類選考を通したのですが、演技を見てみてびっくりしました。ものすごい正統派の、重厚な、重々しい芝居をなさる。名前は松戸デイモンとかふざけてるのに、全くふざけていない、奇をてらったりり安易なオモシロに走ったりすることなく、役の本質、背骨、真ん中にきちんとアプローチしている。非常に清潔で端正な芝居でした。詳しく聞いたらさる高明な俳優さんの付き人をしばらくなさっていたらしく多大な影響を受けたとか。おそらく観客の皆さんも名前の印象からイロモノ的に想像されているでしょうが、正統派です。僕は彼のオーディションでのセリフを聞いて殆ど泣きそうなくらいでした。松戸デイモンさんとはそういう俳優です。

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渡辺菜花

彼女もまた22歳と最年少の一人ですが、経歴がちょっと異常で、すでに高名な演出家と多数ご一緒されています。名前を並べると、僕の師匠のような人である永井愛さんをはじめとして、ウォーリー木下さん、田中麻衣子さん、そして僕の親友の山崎彬くん。何だこれはと。でもまぁ経歴じゃない、会ってみるまでわからないと思ってオーディションで見てみて、一目惚れと言って良いほど惹きつけられました。非常に深い、強い、熱い情動、情熱、情感を持っている。彼女に頼んだ役にまさに必要な炎がそこにありました。『動員挿話』の数代という役なんですが、身投げまでする彼女の情熱、今を生きていたら正にこういう人なんではないかと思いほぼ即決でオファーをしました。2019年末に上演したダルカラの『マクベス』を観てくれていて、あれが非常に好きだったと応募書類に書いてくれていたんですが、それも安心材料の一つです。やはり作品を見て通じ合っているということは大きな安心材料です。彼女とはいい共同作業ができそうです。

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白組

出演者:倉橋愛実(DULL-COLORED POP)、荒川大三朗、石川湖太朗(サルメカンパニー)、石田迪子、伊藤麗、函波窓(ヒノカサの虜)、國崎史人、古河耕史

赤組の「情熱」のようにわかりやすいキーワードはないんですが、精緻な彫刻のような、克明で解像度の高いリアリズムをやれるんではないかと考えているのが白組です。前回公演『プルーフ/証明』で真面目にリアリズムを考えてみたら非常に発見が多かったんですね。現実を模写することで他者と繋がれると言うか、共有できるものが増える。特に今回は100年近く前に書かれた本をやるわけで、私という演出家が何をしたいのか、表現したいのか、それは何よりもまず「100年前のリアルを再現すること」です。自分の美学やこだわりはその後で良い。いや、もはや要らないのかもしれない。自分を消すような演出をするべきかもしれません。

そんな白組に参加する俳優たち、一人ずつ紹介していきます。

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倉橋愛実(DULL-COLORED POP)

『福島三部作』第一部のヒロイン・美弥ちゃん役が彼女のダルカラデビュー戦でした。そのときも思ったんですが、顔立ちなのか声なのか、妙に古風な役や衣裳が似合う人です。普段、私服として着物を着ていたり髪にかんざしを挿していることがあったりするので本人も和物が好きなんでしょう。今回は大正・昭和が舞台ですからよく世界観に馴染みます。またこう見えてコテコテの関西人で愉快なことが大好き。今回演じる役のちょっと抜けてるところやユーモラスなところをうまく担ってくれるんじゃないかと期待しています。岸田國士にはフランス文学風の典雅で知性的な面だけでなく、新聞小説の連載なども持っていた大衆芸術家としての側面もありました。『動員挿話』『かへらじと』ともにくすりと笑えるくだりもあります。真面目ぶらず、悲劇ぶらず、人間を描くというのはそういうことなのかもしれません。

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荒川大三朗

まず名前がもう最高にカッコいいですよね。荒川大三朗。風貌も含め昭和のスター俳優のような剛毅さがあります。演技でも堂々とした芯のある良い声、非常に迫力があり、男くさく、今回のような古い日本人を描こうという作品では非常に映えます。お話してみると非常に繊細で丁寧な方という印象、かつまた非常な勉強家で、稽古入り前に岸田國士の論文を大量に集めて読んでいて、僕の方が焦ったくらいです。実際、荒川さんが読んでいて僕が読んでないものがあったので、慌てて取り寄せて読みました。岸田國士が元々好きだと仰っていましたが、稽古と研究を進める中で彼のまた別の顔を見つけていくことになるでしょう。そしてそのことの意味や問いかける内容について、荒川さんとじっくり話してみたいものです。

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石川湖太朗(サルメカンパニー)

「あまりにも上手くてオーディションのときびっくりした」と同じ白組の函波窓くんがTwitterに書いていましたが、僕も同じく驚いた口です。ぐっと押し殺したような慟哭の演技が印象的で、昔からよく「台詞は肚(ハラ)で言うんだ」みたいなことを言いますが、まさにそれをやっている。肚の底にある感情が声に滲み出ている、いい芝居でした。出演決定後、出演されるお芝居のご案内をもらったので観に行ったらもう一度びっくりしまして、作・演出も全部やってて主演もしていた。しかもチャチなものじゃなく、駅前劇場の空間を完全に支配し、全編生演奏という大きなスケールの作品です。今回は俳優としての出演ですが、五年後、十年後、演劇界を引っ張っていく力のある人になるでしょう。DULL-COLORED POPや客演陣のやりようをすべて盗んでもらい、以後の活躍に活かしてもらえたら幸いです。(何かもうぜんぶ終わっちゃったみたいな文章になってしまった。まずは稽古頑張ろう)

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石田迪子

小劇場ファンなら顔も名前もご存知でしょう。出演歴を見れば二兎社、青☆組、木ノ下歌舞伎ほか、ずらりとあちこちでご活躍で、僕も10年以上知り合いなのですがご一緒するのは今回が初めてです。まだ僕も演出プランが定まっていなかったオーディションのときにある台詞の解釈について二人で話し合ったんですが、それが非常に良い感触でした。嘘のない真っ直ぐな芝居をする方なので、話し合いを経てがらりと台詞の雰囲気が変わり、その実力にうなると共に「今回は特にこういう作り方をしていけたら良いな」と方向性が見えた気がしたものです。赤組の原田理央ちゃんと同じ役をやるのですが、おそらく全く違う役が立ち上がってくるはずです。それが彼女の魅力でもあり、個性でもあります。

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伊藤麗

こいつはもう本当に問題児と言うか、『プルーフ/証明』のドキュメンタリーフィルムを観た人はわかるかもしれませんが、嵐のような、アラスカの熊のような、活火山のような女です。そんなところが僕は大好きで、変に飼い慣らされていない人としての面白みが役によく出る、まさに「俳優」だと思います(俳優という言葉の語源は、一説には「人を楽しませるのに優れた人」なんだとか)。白組は比較的端正な、理知的な人が多く集まっていますが、その真ん中に彼女がいるというのが面白い。伊藤麗が暴れ、石川湖太朗が苦しみ、石田迪子が迷惑して、古河耕史が何とかする。完璧な布陣です。実は大学で歴史学を専攻していたそうですから、資料調査、テーブル稽古でも活躍してくれるかもしれません。あまりテーブルにじっと座っている彼女のイメージが沸かないのですが。

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函波窓(ヒノカサの虜)

去年とあるオーディションでお会いして、その作品では合う役がなく出演とはならなかったのですが、「この人を逃しちゃいけない」と思い今年の2月に東京芸術劇場プレイハウスで上演された『シラノ・ド・ベルジュラック』に出演してもらいました。そして今回ダルカラにもお呼びしたわけで、非常に買っている、信頼している俳優です。技術があるし発想も面白い。その上、人当たりがよく礼儀正しい(一体最近の若者はどうなってるんでしょう)。しかし、演技の中ではざらっとした凶暴な瞳を見せることがある。僕が作家として座右の銘にしている芥川龍之介の言葉にこんなものがあります。「文を作らんとするものはいかなる都会人であるにしても、その魂の奥底には野蛮人を一人持っていなければならぬ」。函波くんも本当にそんな感じで、柔和な顔の裏で野蛮人を一人飼っている。彼の良さを引き出すいい配役ができたと思いますから観に来て下さい。

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國崎史人

彼とは変な出会い方をしているんですが、書類で見て全然パッとせず、実際に会って全くイメージが変わった、平たく言うと「書類より全然いいじゃん!」と驚いた人です。上の写真も左は良いですが右はやはり残念な写りで(なぜこれを掲載用に送ろうと思ったのだろう)、彼は極度に宣材写真で損をするタイプの人なのかもしれません。俳優としては朴訥とした率直な、ピュアな演技をする人ですから、飾らない人柄の現れと言えるかもしれません。生真面目で愛らしい好青年で、今回お願いした役が現代に生きていたらこんな風に生きていたんじゃないかなと想像します。それは嬉しくもあり、実につらい想像でもあります。ぜひ生で見て下さい。特に彼は。

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古河耕史

劇団員以外では最も多くご一緒している俳優さんじゃないかと思います。彼に関する驚きのエピソードは枚挙に暇がないんですが、異常に優秀な俳優で、「鬼神の如き」とか「悪魔的に」とつけてもいいくらい上手い。右の写真は『福島三部作』第二部のときのものですが、薬物も催眠術も使っていません。それでこんな表情ができるんだから、俳優というのは恐ろしいものです。また表現力以前にまず読解力が非常に高く、今まで何度も「演出家(=僕)より本が読めてる」ケースがあり、救われました。上記『福島三部作』第二部も、書いた本人である僕よりもよほど、この場面やこの台詞をどう見せたらいいか、聞かせたらいいかわかっている、教えてもらうようなことがありました。今回の白組のキーマンです。

僕はよく演出家と俳優は上も下もなく対等であり、それぞれのプロフェッション(専門領域)が違うだけだという言い方をします。僕の仕事は外から客観的に見て、見え方を検討し、ダメ出しすること。俳優の仕事は劇世界の内部を主観的に生き、行動し、自分の視点から世界や相手役を見ること。特に古河くんとはそういうプロフェッションの棲み分けが良くできている気がしますが、白組全体でそういう棲み分けを行い、良い共作・共犯関係が結べるのではないかと期待しています。

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「声の出演」の紹介は後日、ないし劇場で販売されるパンフレットにて……。