vol.24出演者紹介:宮地洸成

Birthday:1997/08/04 Birthplace:東京都 Height:174cm
特技・趣味:テニス、ゲーム、登山、お散歩

上智大学経済学科卒。高校演劇部で演劇活動をはじめ、2017年より小劇場を中心に舞台俳優として活動開始。2018年の福島三部作第一部『1961年:夜に昇る太陽』への出演をきっかけにDULL-COLORED POP劇団員となる。10代の田舎っぺから死にかけの老王まで、実年齢より幅広い役柄を演じる。奇天烈な身体とリアリズムの同居した演技への評価が高く、個性派俳優としての頭角をメキメキと表してきている。

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「 自分は演劇をやらなきゃ」

高校時代は演劇部としてかなり熱心に活動していたんですが、大学に入ってからは特に何もしていませんでした。「高校卒業しても演劇続けんの格好悪いな」と思って学科の勉強に打ち込んだりおしゃれな趣味に手を出そうとしたり、いや、正直に言うと大したことはせずブラブラしていました。いま思えば高校演劇からフィールドを変えて活動をすることへの自信がなかったのかも知れません。

演劇自体は変わらず好きだったので、観劇趣味は続いていました。そんなある日、高校時代からの友人が出演している芝居を観に行ったら、内容はさっぱりわからないのに面白かったんです。面白いだけならまだしも、演っている本人が生き生きして楽しそうだったのが、何より悔しく感じてしまって、続けるかはさておいても自分は演劇をやらなきゃという気持ちがその時に芽生えました。それが、今も続いています。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「 ジム・キャリー 」

ジム・キャリーが幼い頃から好きでよく真似していました。いまでも元気がないときはジム・キャリーが出ている映画を観ます。あんなに突飛な遊び心とリアルな人間像を両立させていて本当にすごくて、ずっと憧れています。

熱海殺人事件の池田成志も、高校時代に映像を何度も観てコピーしたことがあります。独特の喋り方で何言ってるかわからないこともややあるのに、それでいいんだと思わせる魅力を感じます。

また、世代的に生で観たことはないのですが、つかこうへい氏の作品はどれも本当に好きでした。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「 その役で何ができるか・ どう遊べるか妄想する」

戯曲から創る場合の話になりますが、自分がその役で何ができるか・どう遊べるかを考えたり妄想するところから始めます。

そのためにまずはひたすら本を黙読します。音読してしまうとそれだけで楽しくて満足してしまうので、なるべく黙読がいいです。ピンとくるアイデアが思い浮かんでも、メモするときには「~かもしれない。知らんけど」と付け足しておいて、一つの考えに決めてかからないように気をつけています。

また並行して、関係あるかどうかわからない本や映画など、外からのインプットを増やすようにもしています。自分の想像力の外にあるものを持ち込むことで、飽きがこないようにするためです。やれそうな遊びを多くストックしておいて、今回の上演にふさわしい解釈や方針ができたら、ストックからよりベターなものを選んでいくことが、僕にとっての役作りになります。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「相手役・観客と『関係すること』」

相手役・観客と「関係すること」を大事にした上で面白い作品を作りたいと思っています。

人が物理的に一人でなく誰かと空間を共にするだけで、そこでは既に何かが起きている・始まっていると私は思っています。そしてそれは演劇というライブ芸術の核心でもあるはずです。

題材や役に対する僕自身のこだわりを必然的な面白さとして観客に提示することは当然の課題としても、それを何よりも人間たちがそこにいるということの面白さで語りたい。戯曲の解釈がどれだけ奇抜で魅力的かつ論理の通ったものだとしても、人と人がそこにいるのに影響しあっていなかったり、あるはずの影響が無視されているだけで、それはすごく虚しい営みです。

僕は頑固職人のように自分の趣味に一人で走ってしまいがちなので、心を改めて、まずはそれを座組との協同作業で作り上げていきたいと思います。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「 演劇はどうせ嘘なんだから嘘をとことん突き詰めたほうが面白い 」

嘘のない演技をやろうとした結果、何をしても嘘くさく感じて何もしなくなってしまうという演技の失敗があります。観客は嘘だとわかった上で演者の言動を観ているのだから、本当の意味で嘘のない演技など存在しないのに、なぜかやってしまうんですよね。

演劇はどうせ嘘なんだから嘘をとことん突き詰めたほうが面白い。しかし、そんな嘘だらけの演劇の中で、一つだけ本物が混じっています。それは身体です。身体はいまここに確かに存在し、絶えず何かしらの運動をしながら、そのリズムや状態を常に変化させています。俳優は嘘を信じることで身体をその通りに変化させる。観客はそれを見ることで、感じて、俳優同様に身体を変化させる。演じるとは、嘘を用いてそこにいる人間の身体に変化を起こすことなのかもしれないなあ。というようなことを今入っている現場で考えています。

Q6.俳優としての座右の銘:「自分自身の問題として読む」

山崎努『俳優のノート』より、「自分自身の問題として読む」。これは金言ですね。

役の人物の動機でなく、なぜ、私がいまここにいてこれをするのか。当事者意識と言い換えればわかりやすいでしょうか。客観的な舞台のイメージがしやすい戯曲ほど役の主観が置いてけぼりになりやすいし、実際僕はそう作ってから役のディティールに苦戦することが多いので、この言葉を度々思い返しては反省しています。

正確にはこの言葉、「自分自身の問題としてリア王を読む」と、山崎氏自身がシェイクスピアのリア王を読解するにあたっての心がけとして書かれているのですが、戯曲に限らず他人が書いた文章を読む際にも使えるので常日頃から意識することが多いです。

Q7.最後に自由にメッセージを:「戯曲の想定を更に超えた圧倒的な上演に」

僕がお客さんだとしたら、面白い作品を創りますと言って期待以上のものを発表するクリエイターの作品を観たいと思います。今回やる『プルーフ/証明』は本当に面白い戯曲ですから、俳優さえ良ければ面白い演劇になるとは思います。しかし僕は戯曲の想定を更に超えた圧倒的な上演、この戯曲を面白いと思わない方にもリーチする、演劇そのものの面白さが感じられる作品にしたいのです。それに挑戦することのできる作品だと思っております。全身全霊で戦います。

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演出家コメント

オーディションに勝ち抜いて2018年に福島三部作・第一部『1961年:夜に昇る太陽』に出演して以来、何気にDULL-COLORED POPほぼ皆勤賞です。『あつまれ! くろねこちゃんとベージュねこちゃんまつり』、『マクベス』、『丘の上、ねむのき産婦人科』などに加えて福島三部作は第一部~第三部すべてに出演している唯一の俳優です。控え目な男ですが、非常に高い実力を持っています。でなければこうも連続で出演したりはできません。

年々うまくなっていますが、元々うまかったと言うか、演劇に関するセンスが非常に良い。まだ四捨五入したらハタチなのに抑制した大人っぽい芝居ができる。でもきちんと「心を動かす」演技を必ずするので、目の色を見ているだけで手にとるように感情が伝わる。また演出オーダーへの応答速度が非常に早いので、結果的に様々な役や表現ができる。勉強家なのでしょう。こないだ僕も読んだことないような演技の専門書を読んでいたので、慌てて僕もAmazonで購入しました。忙しくてまだ読めていませんが、負けてられないので必ず読もうと思います。

阿久津くんの記事に書いた通り、宮地くんも今回正式にオーディションを経た上で出演を決めました。劇団員シードではありません。そして宮地くんは上記インタビューなどでも度々言っている通り、「これだけ本が面白いなら必ず面白くしてやる」という気概のようです。控え目な男なのであまり大口は叩かないのですが、しっかり大口叩いているので、これはよほど本気なのだと思います。

彼に限らず今回は稽古初日に台詞を全部入れてきそうな俳優ばかり居並んでいるので、本番だけでなく稽古でも最初から濃厚なセッションができるでしょう。そして彼は、僕からすると15歳も年下ですが、対等に話のできる表現者であり、彼の年齢・24歳は、僕が作家としても演出家としても一皮むけた大いなる成長の年でした。歴史を変えるのはいつも20代の若者です。彼の知性とセンスでぜひ、僕には思いつかなかった新しい『プルーフ/証明』を生み出してもらいたいと思います。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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