vol.24出演者紹介:伊藤麗

Birthday:1994/08/18 Birthplace:千葉県 Height:160cm
特技:掃除・片付け、アロマテラピー、マッサージ
趣味:散歩 資格:剣道二段、色彩検定2級

2017年 国際基督教大学卒業。一般企業に就職後、2018年 新国立劇場演劇研修所(第14期)入所。2021年、研修修了。

【新国立劇場演劇研修所 公演】
『怪物/The Monster』(作:アゴタ・クリストフ 演出:田中麻衣子)、『オズマ隊長』(原作:手塚治虫 演出:田中麻衣子・スズキ拓朗)、『尺には尺を』(作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:山崎清介)、『マニラ瑞穂記』(作:秋元松代 演出:宮田慶子)

【出演舞台】
蓬莱竜太プロデュース アンカル『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』(作・演出:蓬莱竜太 )、岸田國士短編戯曲実験室『人間讃歌』(作:岸田國士 構成・演出:三上陽永)

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「ずっとやりたかったことを、やりなさい」

プロの俳優になろうと決心したのは23歳のときです。大学卒業後、一般企業に就職しましたが、会社員に本当に向いていなかったようで消耗が激しく、適応障害になりました。それをきっかけに、健康は当たり前ではない、限られた人生の中で自分が成し遂げたいことは何かを今この瞬間から真剣に考えなければだめだ!と痛いほど感じました。

そして、ジュリア・キャメロン著『ずっとやりたかったことを、やりなさい』(”The Artist’s Way”)を読んで大きな影響を受け、自分でワークを進める中で、俳優という夢に辿り着きました。新国立劇場演劇研修所に入所して、日々全力で自分自身と向き合い、芝居の楽しさと厳しさを知る中で、プロの俳優の道を進む覚悟がより強いものになり、今に至ります。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「黒柳徹子さん、 竹内結子さん」

黒柳徹子さんは、人間としても女優としても最も尊敬する方です。著作は全て読みました。優しくて真っ直ぐでかわいくて強い、その唯一性にとてつもなく惹かれます。

竹内結子さんは、TVが唯一の娯楽だった田舎育ちの私にとってドラマの女王でした。彼女が出演するドラマは全部録画して、セリフを覚えてしまうほど何度も何度も何度も見ました。竹内さんのお姿を見ることは叶わなくなってしまいましたが、彼女の魂が安らかであることを祈ります。私にとって、いつまでも憧れの特別な人です。

(それから、俳優ではないけれど)宮田慶子さん。私の演劇の母です。深い深い愛で、たくさんのことを教えてくださいました。芝居ってこんなに豊かなんだ、こんなに遠くに来られるんだ、そんな経験をたくさんさせていただきました。今でも上手くいかないときには、頭の中で宮田さんが叱咤激励してくださる声が聞こえるほど、大変お世話になった大好きな大好きなお母ちゃんです(怒られるかな……)。成長した姿をいつかお見せして恩返しがしたいです。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「実現させたいことを念を込めて丁寧に書く」

準備の初期段階で私が必ずやること

  • 全体を理解することを意識して戯曲を何度も読みます。一旦自分の役の視点は外します。
  • 戯曲を話題ごとに細かく区切ってそれぞれタイトルをつけます。
  • 戯曲の作者のことを調べます。作者の生い立ち・背景を知ることで、戯曲を理解するヒントをたくさんもらえるからです。
  • この公演で実現させたいこと、見たい景色、目標をノートの1ページ目になるべく具体的に書き出します。念を込めて丁寧に書きます。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「キャサリンに信用してもらえるような準備を積み重ねて 『会話劇の最高峰』に登頂する」

私は、会話劇を全幕通しで上演すること自体がそもそも初めてです。

今自分が持っているツールを最大限使って稽古初日に向かうこと、キャサリンに信用してもらえるような準備を日々積み重ねることで、「会話劇の最高峰」に登頂するのが今の目標です。

また、今回は役の印象に合わせて体を絞ることにチャレンジします。ここで宣言してしまえばやるしかなくなると思うので…。どれくらい変わっているか、劇場でぜひお確かめください。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「演技が『上手い』とはどういうことなのか」

演技が「上手い」とはどういうことなのだろう、そして「上手い俳優」というのは果たして良いことなのだろうか、と近ごろ考えています。

魅力的でなぜか目が離せない、そんな俳優に私はなりたいのですが、魅力……人を惹きつけるものって一体何なんでしょう。

それから、今参加している舞台の稽古中に思ったのが、観客はセリフを言っている人ではなくそれを聞いている相手役の反応を見ているのでは、ということです。その人の反応で、そのとき舞台上で話されているセリフの本当の意味や状況がわかるのだと思います。セリフの多い少ない、ある無しなんて関係ないな、とあらためて。

Q6.俳優としての座右の銘:「演技とは想像の設定の中で真実に生きること」

「演技とは想像の設定の中で真実に生きること」(サンフォード・マイズナー)

私が演技をする上で最も大切にしている基本の考え方です。演技は嘘なんて言う人もいるけど、その瞬間、その状況を100%信じて相手や世界と向き合うことは、まことの中のまことだと私は思います。

「心の中に大きな怪物を飼いなさい」

これは横田栄司さんが仰っていたことです。その怪物が素敵な仕事を掴んでくるようになる、小さいのをちまちま飼ってたって何にもなんないよ、と。この言葉を聞いてから、俳優としてもっと大胆に在ろうと思うようになりました。謙虚さも大事ですが、謙遜しすぎて自分で自分を小さくしてしまうことがないように心がけています。

Q7.最後に自由にメッセージを:「俳優としてはもちろん、1人の人間としても大きなターニングポイントとなることを予感して、嬉しくて楽しみで仕方がありません」

ダルカラファンの皆さま、『プルーフ/証明』を楽しみにしてくださっている皆さま、きっとほとんどの方が初めましてだと思います。伊藤麗です。インタビューを読んでいただきありがとうございました。

「谷賢一演出の舞台に出る」というのは研修生のときから夢ノートに書き続けた私の大きな目標です。キャリアは浅いですが、気合でオーディションに挑み、キャサリン役をいただくことができました。こんなに早く夢が叶うとは…。

『プルーフ/証明』という素晴らしい戯曲に取り組める幸運に感謝します。この公演が、俳優としてはもちろん、1人の人間としても大きなターニングポイントとなることを予感して、嬉しくて楽しみで仕方がありません。大胆に飛び込んでいこうと思います。どうぞ応援よろしくお願いいたします。

* * *

演出家コメント

彼女のことはほんの十回くらい、新国立劇場演劇研修所の授業で教えたくらいですが、一応「教え子」ということになるんでしょう。その頃から目立っていた……というわけではないのですが、野心家で、危ない目をしており、しかもその野心を成し遂げるための努力を厭わない真面目なところもありました。満を持してオーディションに応募してきたので、あえてベテランや先輩のひしめく早朝1組目に入れて、様子を見てみました。

そこでのパフォーマンスが、まぁ圧巻で、全く萎縮していない。それどころか異常にギラギラした熱意を発しており、しかも彼女なりのプラン=野心がしっかり見えた。学生時代は野心の火種は見えていたものの、どこかちょっと控え目な印象があったのですが、大胆と言うかほとんど不遜・不敵と言ってもいいくらい主張のある芝居をしていた。

これは、良いことです。協調性のない人に集団創作である演劇は作れませんが、かと言って「俺が面白いと考えていることは、これだっ!」と提示できない人はいい俳優にはなれません。僕は授業やワークショップで必ずこう教えます。「俳優は一個の独立したクリエイター」であり、「演出家とは領域が違うだけで対等」、だから「演出家の言う良し悪しとは別に、自分の中で良し悪しの基準を持たなければならない」と。

島本和彦『吼えろペン』第一巻より

もともと業界内では「新国出身の俳優はどうもお行儀が良すぎてね」という声を耳にすることもあるくらいで、彼女のように荒々しく野心的に振る舞えるのは一つの才能だと思います。演出家に導かれるのではなく、自分でしっかり歩く。

ずいぶん成長したものだなあと思っていましたが、上記インタビューを読んでよくわかりました。横田栄司さんの 「心の中に大きな怪物を飼いなさい」 という言葉を聞いて大胆になろうと決めた、謙虚さで自分を小さくしてしまうことがないように……と言っていますね。横ちん先輩、さすが、いい仕事していらはる。最高だ。

僕の敬愛する芥川龍之介もこんなことを言っています。

文を作らんとするものはいかなる都会人であるにしても、その魂の奥底には野蛮人を一人持っていなければならぬ。(『侏儒の言葉』より)

伊藤麗と僕と、野心的で怪物めいた、野蛮な魂を持つ『プルーフ/証明』を作りたいと思います。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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