vol.24出演者紹介:古屋隆太

Birthday:1971/12/31 Birthplace:東京都 Height:171cm
特技:キックボクシング、仏語 趣味:散歩 資格:英検、自動車

1992年 早稲田大学劇団森に入団。
1999年 劇団青年団に入団。
2017年 株式会社エクリュに所属。

最近の出演作品:

【舞台】
2022年 『あの子より、私』
2021年 『花をそだてるように、ほんとうをそだてています。』
2020年 『迷子の時間 -語る室2020-』

【ドラマ】
2021年 『お茶にごす。』、『シェフは名探偵』、『レッドアイズ 監視捜査官』、『ここは今から倫理です』

【映画】
2022年 『リング・ワンダリング』
2021年 『ボディリメンバー』、『かそけきサンカヨウ』
2020年 『浅田家!』、『his』、『本気のしるし』

【CM(ナレーション)】
多数 https://e-cru.jp/profile/furuya-ryuta.html

Contents

Q1.演劇 ・俳優を始めたきっかけ:「自分は演劇をやるために生まれてきた」

幼稚園のお遊戯会で『花咲か爺さん』の、ポチが主役と言われ思わずポチに立候補。人生初立候補。カーテンコールで恥ずかしさからお爺さん役の子たちの陰に隠れたのを可愛いと拍手喝采をもらい、秘することの得策もあることを知ったのはこの時。

大学の演劇サークルの新人公演にて演劇の通常ルールを知らずクライマックスを客席に背中を向ける形でやったら「背中で演じるなんてすごい」と大絶賛をもらい、自分は演劇をやるために生まれてきたと強く思い込んでしまう。同期の紳ちゃんと何があってもやめないと誓い合う。

そして今に至る。といった感じです。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「山内健司さん 、 國村隼さん 、 奥田洋平くん 、 木野花さん」

たくさんいらっしゃるので、最近触れて強く印象に残っている方とその作品を。

・山内健司さん(映画『Ato San Nen』)
山内さんは、僕の所属する劇団青年団の先輩です。自分の知る限りの山内さんの人格・人柄が発揮されているような人物像とその振る舞いに衝撃を受けました。山内さんがヒロシ(役名)だし、ヒロシが山内さんだし。自分もこんな仕事ができるようになりたい!と思いました。

・國村隼さん(ラジオドラマ『銀座の神様』)
ラジオから聴こえる國村さんの声はたしかにでっぷりとした体型(小林亜星さん役)から発せられるそれのようで、かつドラマで描かれている亜星さんの超素敵な奥ゆかしい慈愛が感じられ、やりとりの温かさで最後に涙が溢れて止まらなくなりました。自分もこんな仕事できるようになりたい!と思いました。

・奥田洋平くん(演劇『Smells Like Milky Skin』)
技巧を排して剥き出しの自分で舞台に立っているようなそんな存在感で、奥田くんは青年団の同期なのでその人格を知っているつもりなのですが、その剥き出しの奥田くんの人格が、フィクションの激動の運命に翻弄され、なんとかかんとか生きている様を観て、感動にうちふるえてしまいました。このような俳優とまた共演したい!と思いました。

・木野花さん(演劇『鴎外の怪談』、『月影花之丞大逆転』、演出『あれよとサニーは死んだのさ』、映画『愛しのアイリーン』)
エネルギーが凄くて、目からウロコがぶっ飛ぶような観劇体験をいつもさせてもらってます。とはいえ別に乱暴なわけでもおしつけがましいわけでも全くないです。軽やかさはまるで舞う花びらや小鳥の羽のようで、太陽を浴びているような気持ちになります。演出作品でもキャストのエネルギーが120%活かされているようで、観ると多幸感でいっぱいになります。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「丸ごとノートに書き写す」

完成した台本をあらかじめいただいた場合は、丸ごとノートに書き写すことから始めます。自分の手で書いてみて初めて感じることはけっこうあります。

作品や役から思い浮かぶものについて書かれていそうな本、なんとなく感じがマッチしてそうな音楽の曲を探したりもします。

次に自分の出るシーンのセリフを相手役のものも含めゆっくりめのテンポで録音して、散歩しながら聴きながら自分のセリフのところで重ねて口ずさみます。

セリフは文字で書かれていますが最終的には音声情報になるので、耳から入れていくと自分は良い感じです。これは住まいが都心から離れていて、駅からも離れているので移動時間を有効活用するためでもあります。

でもこれよりもっと好きな方法が実はあって、台本がダイアローグで、なおかつ演出の賛同も相手の賛同もあり、なおかつ全体の稽古の前にまとまった時間を取れる場合に限るのですが、“じっくりリーディング”という特殊な読み合わせができると楽しいです。
これは相手に影響を受けるためのエクササイズで、アメリカで俳優修行をしてきた先輩から教わりました。個人的にはここから始められたら最高に楽しいです。この方法はまだ一度も台本を読んでいない状態が望ましいので、公演のための稽古ではなかなか実現困難ですが。

録音はやっている人が多いように思います。書写をやる人にはあまり会いません。じっくりリーディングは他にやっている人を知りません(難しい方法なので要説明)。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「自分をよく見せようという欲に勝ちたい」

自分をよく見せようという欲に勝ちたいです。

アクセル全開でも壊れない身体にして稽古本番を全うしたいです。

今回に限らず常に心がけることですが、相手・環境に対して敏感でありたいです。受けた影響で生が紡がれてゆくような芝居がしたいです。

最近感動をうまく言葉で表せないことを以前より自覚していて、それは自分の言語表現力が拙いからに他なりませんが、それを補ってくれていたものが最近は無くなってしまったということもあります。

それは「人と話すこと」でして、ちょっとお酒を飲みながら人と話す中でだんだん適当な言葉が見つかってゆくという経験がかなり僕を支えてくれてたことに最近気づきました。

他人との会話・対話はエネルギーの要ることで大変ではあるけれど、ものすごく大事な、そしてものすごく素敵な行為だとあらためて思いました。人と人が言葉のキャッチボール(暴投含む)を通して思いっきり影響し合う様は、何より面白いと信じています。この戯曲でそのような芝居を実現したいです。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「演じるとはどんな行為なのか」

演じるとはどんな行為なのか、うまく言えませんが、自身の体(心を含む)を用いて人間を表現するということは確かだと思います。なので役の人物(人格)と俳優自身のそれがあって、どう折り合いをつけるかみたいな問題があると思います。これについては最近ボイストレーナーの新田恵先生のご指導からヒントをいただきました。

50歳の私には20代の時の声や30代の時の声はもはや出せない。身体は日々刻々とつくりかえられていて、条件もコンディションもまるで違うのだから当然です。ましてや他の誰かの身体が発する音声を、それにどんなに憧れたところで出せるはずはなく、やるべきことは自分の身体を活かすのみ。という方針のもと、発声に関連する筋肉や関節のほぐし方、伸ばし方、拡げ方、開き方、鍛え方、空気の圧や振動をどこを通してどこに当てるかなどを教わり、探ることをしています。そのようにトレーニングしている身体を通して「アイウエオ」を言ってみることから、役のセリフを言ってみることへ。そこから更に役の設定を意識して言ってみることへ。更に恥じらいなく情動的に言ってみることへ。更に相手をしてくれる俳優に向かって言ってみることへ。相手の反応への自分の反応に乗っかってまた言ってみることへ。そしてセリフに込められている動詞を見つける。

一般社会生活の中では理性のブレーキを多用しつつ無意識無自覚に行なっているこのような発話やコミュニケーションのメカニズムを、秘密の実験室で、物凄く意識的に自覚的に初歩からやってみる。それが僕が何より好きなことです。

Q6.俳優としての座右の銘:「『腐った色もにおいも、ちょっともつけちゃダメだよ』、『びっくりするくらい評価を忘れな』」

「腐った色もにおいも、ちょっともつけちゃダメだよ」

「(自分でも)びっくりするくらい評価を忘れな。欲が古屋くんを小さく見せちゃう」

両方、木野花さんに言われた言葉です。

この二つで、僕が気をつけなければいけないことをほぼ全て言い尽くされているように思います。

12/10のTBSラジオ『金曜ボイスログ』で臼井ミトンさんが薬師丸ひろ子さんの歌について論じていて、それがまさに木野さんが言われていたこととほとんど同じことだと感じました。「彼女には歌手としてのエゴ(自分をよく見せようとする欲)がない。表現者は腕を磨かないといけないけど、自慢するためや評価されるためであってはならない。芸がお客さんとの心と心の交流であるならば、芸の真髄は見栄を捨てて精神的に丸裸な状態になること。彼女はそれができているように思う」とミトンさんはおっしゃっていました。

木野さんには「もっと貪欲になってみたら」と言われたこともあり、それはつまり、承認欲求なんか雲散霧消するくらい自分を磨くことに貪欲(夢中)になれ、ということなんだと思います。

明るく楽しく、かつ犀の角のように歩みたいです。

Q7.最後に自由にメッセージを:「 谷くん! 僕は今谷くんと芝居つくリたい」

自分が舞台に立つことも、お客さまに劇場まで観に来ていただくことも以前より更に貴重で有難いことになりました。

50歳になって、人生はあっという間だということもいよいよ強く実感しています。あと何回芝居ができるかちょっとわからなくなってきました。今回は、僕としてはとても奇跡的な展開で出演させていただくことになりました。

元気なうちにまた谷くんと熱い芝居づくりをしたいなと、秋の深まりとともに思っていたところで、ある現場で待ち時間があまりに長くて、もう滅多に見なくなってたtwitterをひらいたら谷くんのツイートが最初に見えて、「『プルーフ』の3次オーディション中」みたいな内容で、数年前に谷くんが「古屋さんがやったら面白いと思う役があって、『プルーフ』という名作なんだけど」と言っていた、そんな記憶があって、

「谷くん! 僕は今谷くんと芝居つくリたい」

「でもオーディションやってるの知らなかった。もう3次なら諦めます、公演は絶対に観に行って次があるならオーディション受けたいと伝えよう」

「人生は短いのに諦めてよいのか?」

「直訴するだけしてみるか?」

など悶々としながら、とりあえず谷くんのツイートに「いいね」だけしたら、その晩谷くんから連絡が入った。というわけです。

お客さまに演劇を楽しんでいただきたいです。どうぞ宜しくお願い致します。

* * *

演出家コメント

本拠地・所属劇団は現代口語演劇の牙城・青年団ですが、それ以外にも様々なセンスのいい現代演劇に引っ張りだこで、よく舞台上で拝見していました。好青年から狂気をはらんだやべー役まで様々やってて、「こういう人ってたいてい本人はクールで物静かなんだよな」と思っていたら、お会いしてみてもめちゃくちゃアツい人でびっくりしました。ある現場ではほとんど泊まりがけで十代の若い俳優と熱心に演技のレッスンをしていて頭が下がりました。演技に関する情熱や基礎を大切にするスタンスに共感できる、同志のような先輩です。

非常に涙もろい、感受性の豊かな人で、初めて一緒にお仕事した際に出ていた子役たち(当時14歳だった春名風花・はるかぜちゃんもいました)の演技を見て、カーテンコールで涙したりしていました。僕もそのときは一心同体と言うか、若者たちに完全に感情移入して稽古していたのでかなり熱い稽古場になっていた。ああいう創作への情熱がマグマのように渦巻く稽古場は本当に良いもので、隠れた名作として僕はずっと誇りに思っている作品です。『TUSK TUSK』と言います。

今はいろいろな事情があってやりづらくなっていますが、できることならあのときのように魂と魂をぶつけ合うような稽古がしたい。そのためにはプロデュース公演じゃなくて、劇団公演が必要なんです。気心の知れた、同じ理想や目標を共有した仲間と、遠慮なくぶつかり合うことができる劇団公演が。今回は俳優を育てることも一つの目標ですが、プロデュース公演じゃあ俳優は育たないですよ。プロデュース公演は人が育つ場所じゃないんです。もともと持ってる技を並べる場所なんです。じゃあどこで修行や試行錯誤ができるのか? その一つの場所は劇団だと僕は信じています。

古屋さんとはまだ少ししかご一緒してませんから、知らない顔がたくさんあるはずです。僕も彼から学び、そして少しでも彼に刺激を与えられるような演出をしたいと思います。そして彼と一緒に、芯のある演劇を作りたい。芯のある、つまり心のある演劇を作りたいと思います。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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