vol.24出演者紹介:水口早香

Birthday:1988/09/03 Birthplace:神奈川県 Height:161cm
特技・趣味:英語、歌、絵を描くこと

主な出演歴:

舞台:ミュージカル『We can fly』(構成・演出:舘そらみ)、交響朗読劇『空のハモニカ~私がみすゞだった頃のこと』麻緒役・三好晴子役(脚本:長田育恵 演出:扇田拓也)、NODA・MAP『フェイクスピア』『赤鬼』(作・演出:野田秀樹)、『アジアの女』鳥居役(作:長塚圭史、演出:吉田鋼太郎)、『野外劇 三文オペラ』

ドラマ:EX『緊急取調室シーズン4』第8話 曽根沙織役、EX『逃亡者』、TNC『今夜はオンライン飲み会デス』、EX『ケイジとケンジ 所轄と地検の24時』

映画:『そこにいた男』(片山慎三監督)

他、舞台を中心に映像作品にも多数出演し活躍の場を広げている。

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「誰かと本気で関わりたい」

かなり人見知りするタイプの人間で、それでも誰かと本気で関わりたいと思った時に演劇があったような気がします。きっかけは幾つもあったので、絞ってお答えすると…
一番初めは中高5年間部活でやっていたミュージカルです。映像で見る俳優さんの真似事に過ぎなかったけど、誰かとものを作るということに夢中でした。

語学が好きだったので、大学では英語英文学科に進み、そこから語学留学に出ます。見知らぬ土地での孤独と焦燥感の中、ドラマのクラスで読んだのが『エンジェルス・イン・アメリカ』でした。すっかり惚れ込んでしまい、卒業論文でも取り扱いました。

それから数年後、その作品のワークショップ情報を見つけます。思い切って飛び込んでみたら、変な人、面白い人がたくさんいた。なんだかすごく自由を感じた。それがtptという場所です。多分そこから私の演劇人生は始まっていると思います。チェーホフ、テネシー・ウィリアムズ、イプセン、ロルカ、ストリンドベリ。門井さんが勧めてくれる作品を片っ端から読みました。戯曲の登場人物たちの堂々たる生き方にもとても惹かれ、こういう役を演じられる強くてかっこいい女になりたいと思いました。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「松たか子さん、吉田鋼太郎さん、 野田秀樹さん……」

おそらく全日本人が好きだとは思うのですが、私もその一人、松たか子さんが大好きです。ドラマでも映画でも舞台でもいつも私達を魅了してくれるスターですよね。もう本当にチャーミングでいらっしゃる。大好きです。

そして吉田鋼太郎さんのお芝居はやっぱり心を掴まれます。あんまりに凄くて終演後、私トイレの個室で泣いたことあります。自分の今まで口にしてきたセリフはなんだったんだと思ってしまった。本当にすごい方です。

最近は野田秀樹さんにお世話になることも増えたのですが、出演者としてご一緒した際に目撃できる、野田さんの誰よりも楽しむ姿、あれが本当に素敵なんです。舞台袖でもニコニコとモニターを見ている。そしてものすごいエネルギーで舞台上を駆け巡る。そんな豪快さを持ちながらも、実は誰よりも耳を澄ましている。あんな演劇人に憧れます。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「役と私を照らし合わせる」

私の最初のステップは、役と自分の似ている点を見つけるところから始まると思います。

この人のこの瞬間はああいう時の私と似てるな、この気持ちわかるかも、という感じで。全く違う人物になるというのではなく、私の場合はですが、私にもあり得るであろう一面を役と照らしあわせながら探っていく感じです。そこからはあまり決めつけすぎずに、相手役の方と一緒に作っていくような感じかなと思います。

今回演じるクレアという役に関しては、オーディションで読ませてもらった際、「うわあちょっと、クレア飲みいこ!」とそんな気持ちにさせられました。早速好きになれて嬉しいです。

共演者の方を見て、役同士の過去を勝手に妄想し、使えそうなのをストックしたりもします。今回は家族が相手なので妄想できる過去がたくさんありますよね、楽しみです。

劇場に入ってからの美術や衣装なんかにもいい意味で大変影響されます。靴なんかもヒールとフラットだけで気分が大いに変わりますしね。そういうときは「あ、私女優だわ」なんて感じます。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「やるからには史上最高の『プルーフ/証明』を 」

末っ子育ちで、先輩という役割もあまり担ってこなかったタイプなので、今回のお姉さんの役は大きなステップになると感じています。私自身は自分勝手で、与えられるがままに生きてきた人間ですから。そういう点で、長らく水口早香を見てきてくださっている方たちには新しい面をお見せできるのではないかと思っています。ターニングポイントになりそうな予感です。

創作過程において、言語化というものがあまり得意ではないので、そこを課題にしっかりと周りとコミュニケーションをとって、取り組めていけたら良いなと思っています。

クレアについては、分かったふりもしたくないし、しっかり者のお姉さんでまとめるつもりもない。深くまで探っていきたいです。やるからには史上最高の『プルーフ/証明』を目指します。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「楽しくなければ意味がない」

舞台なんだから楽しくなければ意味がない、と最近そんなことを考えています。

いい役者とは何かを考えた時、やはり自分の演じるものに対して能動的であることだと思いました。それができている人は何が違うのだろうと考えた時、やはり楽しんでいるな、と。でも役者にとっての楽しいっていうのは、楽をするという意味ではないと思っていて。役者にとっての楽しいというのは、自分の心地いい領域を少しだけはみだすことだと思うんです。

今回、谷さんと共演者の皆さんと生む化学反応でどんな自分に出会えるのか楽しみです。

Q6.俳優としての座右の銘:「Talk and Listen. Open your heart. Challenge yourself. 」

学生の頃、所属していた英語ミュージカルの団体で学んだ言葉です。

「Talk and Listen. Open your heart. Challenge yourself.」

大事な場面や緊張し過ぎた時は、意識が自分ばかりに向きがちになりますが、これを心の中で唱えると、肩の力がふっと抜けます。相手とやること、一人にならないこと、これはいつでも大事にしなくちゃと思っています。

尊敬する大先輩がこんなことを言ってました。

「芝居くらいは相手のためにやらなつまらんやろ」

ちょっとエセ関西弁になっちゃいました、すいません。

Q7.最後に自由にメッセージを:「水口早香のこともぜひ知っていただけたら」

こういう上質な会話劇に挑めるというのは役者としてなんとも光栄で喜ばしいことです。

今回3グループあるということもあり、同世代、若い方、そして先輩と、さまざまな俳優の皆さんに出会えるのもとても嬉しいです。それぞれ培ってきたものも違うと思うのでお互い刺激を与え合えるような関係性を生めたら嬉しいですね。この素晴らしい会話劇をあの空間で上演するということ、近い距離感でお客様に見ていただけるわけですから、丁寧に繊細に作り上げていけたらなと思っています。

色々偉そうに語りましたけど、私結構ビビってます、共演者の皆さんどうか助けてください、よろしくお願いします。今回は創作の過程もお客様に覗いていただけるとか。怖い気持ちもありますが(笑)、これを機に作品だけでなく水口早香のこともぜひ知っていただけたらなと思います。どうぞ楽しみにしていてください。

* * *

演出家コメント

江戸時代の昔から「俳優は、一声・二顔・三姿」なんてことを言いまして、声が一番大事と言われる。まずは声でお客を掴む。声、言葉、台詞が最大の武器なわけです。そして彼女はずば抜けて素晴らしい声を持っている。吉田鋼太郎さんや野田秀樹さんといった圧倒的な「音」の感覚を持った俳優・演出家から仕事相手として選ばれてきたのは、彼女の素晴らしい声が彼らを魅了してきたからでしょう。

僕は、二年ほど前になるのかな、あるワークショップでご一緒しまして、彼女の演技の立ち回り、判断力の速さと表現力に驚嘆しまして、後にも先にもこんなことを言ったことはないんですが、ワークショップの途中なのにこんなことを言いました。

「あなたとはいつか必ず一緒に仕事がしたい。いや、必ずするだろう」

ようやくそのタイミングが回ってきました。彼女の知性や逞しさ、力強い声は、クレアという役のイメージにぴったりです。最高の配役でご一緒できるのが本当に嬉しい。

クレアは僕が、四人の登場人物の中で最も感情移入する役です。天才たちに囲まれた凡才。四六時中働いて、人の面倒を見続けているのにちっとも感謝されない苦労人。劇団主宰なんてやってると、数々の「天才」役者の問題行動やワガママに振り回されつつ、夜中まで事務作業だのメールの返信だの、雑務も大量にしなければならない。谷賢一は才能がある? まさか。それこそ野田秀樹さんや井上ひさしさんのような「圧倒的天才」に嫉妬し続ける人生です。クレアの気持ちがよくわかります。

しかし、クレアがいないとあの家族は成立しません。この芝居も成り立たない。「この家族を/劇を支えているのは私だ」。そういう自負がクレアや私を支えている。そして「一日14時間働いて、ここの家賃ぜんぶ払って」いる……。

水口さんがクレアと飲みに行きたがってくれていて良かった。僕とクレアと水口さんと三人で飲みに行きましょう。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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