『マクベス』ごあいさつ

DULL-COLORED POP第21回本公演『マクベス』の当日パンフレットに掲載される(予定の)ごあいさつです。作品ガイドとしてお読み下さい。

ごあいさつ

 『マクベス』は1606年頃に初演されたシェイクスピア四大悲劇の一つです。今回の上演ではあちこちの台詞をカットした上で、一箇所、原作から大幅に翻案(=改変)しています。原作をご存知ない方のために、簡単なあらすじをご紹介します。

あらすじ:

 勇猛果敢で誠実な武将マクベスは、戦争に勝った帰り道、三人の魔女に出会います。魔女たちはマクベスに「いずれは王になる」と、そしてその友人バンクォーに「王にはならないが王を生み出す」と予言し、消え去りました。この日以来マクベスの胸に王位への野心が芽生えます。

 ダンカン王を殺害し、王子マルカムに罪をなすりつけたマクベスは見事王位を手に入れます。しかし慈悲深いダンカン王を殺した良心の呵責、「王を生み出す」と言われたバンクォーへの恐れ、反抗的な態度を取るマクダフの存在などに苦しめられ、ついにバンクォーを暗殺してしまいますが、息子フリーアンスは取り逃してしまいます。恐怖に怯えたマクベスに、魔女たちは「マクダフに気をつけろ」「女から生まれた者にマクベスは敗れはしない」「バーナムの森が動き出さない限りマクベスは敗れない」という新たな予言を伝えますが、同時にバンクォーの子が王位を継ぐ未来も示し、マクベスを混乱に陥れます。マクベスはマクダフへの恐怖からその城に奇襲をかけ、マクダフ夫人や息子たち家族を皆殺しにしてしまいます。

 怒りに燃えたマクダフはマルカム王子を大将に迎えて反乱軍を組織し、マクベスの城に総攻撃を仕掛けます。魔女の予言を信じたマクベスは「敗けるわけがない」と奮起しますが、反乱軍が森の木を掲げて進軍したため「バーナムの森が動いた」と誤認してパニックに陥り、さらにマクダフが「(自分は女から生まれたのではなく)月足らずのまま母の腹を破って出てきた(=帝王切開で取り出された)」と言ったため勇気がくじけ、マクダフの手によって殺されてしまいます。魔女の予言を約束として守り続けたマクベスは、予言によって身を滅してしまうのです。

 マクベスの首を差し出された新王マルカムが「あまり時を置かず、みなの忠節をそれぞれ考慮し、その恩に十分報いるつもりだ」と勝利宣言をしたところで、物語は終わります。

 今回の上演ではマクベスの人物像について大いに翻案を試みました。古典とは上演すること自体が時代に対する批評として機能しますが、さらにどこをアレンジしたか見ることで作り手の現代に対する視点が透けて見えます。『マクベス』はそのままでも十分に面白い作品ですが、現実が混迷を極め、混沌が物語を追い越した現代において、私には、どうしても翻案が必要と思われたのです。古典の一つの楽しみ方として、我々がどう手を加えたか、楽しんでもらえれば幸いです。

 上演時間は約90分を予定、途中休憩はございません。携帯電話など音の鳴る電子機器は必ず電源からお切り下さい。マナーモードでのご使用も振動音や光が他のお客様のご迷惑になりますので、くれぐれもご遠慮願います。

 それでは最後に、原作から一行引用してごあいさつに変えさせて頂きます。

マルカム「我々も出陣だ。さあ、ありったけの元気をふるい起こせ。朝が来なければ夜は永遠に続くからな」(原作・四幕三場より)

翻案・演出 谷賢一