第12回本公演: 『完全版・人間失格』

20チラシ表10年、小劇場の人気劇団が集まった「Project BUNGAKU」にて初演され、観客投票ぶっちぎりの1位を獲得した本作(参考:Project BUNGAKU・観客投票結果発表)を、フルスケールの長編作品として再演/再翻案! 泥まみれクソまみれの人生を25分で駆け抜けた初演のスピード感はそのままに、イケイケ爆音の音響効果とガタガタにぶっ壊れた空間演出で、主人公・葉蔵の内面世界を突っ走ります。

会場は、劇団初進出となる青山円形劇場。ぐるり取り囲む円形舞台で、お客様は「観るリンチ」の共犯者。類まれなる身体能力と百面相のクール・フェイスで観客を魅了した女イケメン・コロ演じる女バージョンと、劇都仙台で若手随一の実力と評判を誇る原西忠佑演じる男バージョン、ダブル上演。小劇場の各劇団で看板を張る豪華客演陣を迎え、そんな二人の葉蔵を、徹底的に追い詰めます。

 

Contents

あらすじ

チラシ表

「恥の多い生涯を送ってきました」

──この手記を書いた狂人を、私は、直接には知らない。
中身を読んで、うげぇ、と思った。
おセンチ。大仰。ナルシスティック。自己陶酔に、自意識過剰。おばか。
これだけ言ってもまだ足りない。
ごく当たり前、誰にでもある日常の苦悩をことさらに、わぁわぁ喚き立てやがる。
苦悩?
違うさ、気取るな。ただの弱音。甘ッたれんな。
毎朝きっちり、30分、乾布摩擦でもおやんなさい。けろりと治るぜ。

「私には、人間というものが、わからない。人間の営み、人間の生活、人間の喜び、人間の、」

 

チラシ裏

──人間も、こうなってしまってはダメだね。私だって、人が何を考えてるのかわからなくて、怖いような気のする時もある。
みんなそうだ。
だからって淫蕩、借金、アル中と来て、挙句にゃ入水自殺に薬物中毒? 結構なご身分だ。
毎夕、お便所掃除でもしてご覧。心がさっぱり、綺麗になる。
私にも、私にだって、人間というのものは、わからないのだから。

「でも、私の知ってる葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、……いいえ、飲んでも、神様みたいないい子でしたよ」

* * *

谷賢一さんを知ったのは、2年ほど前なので、それ以前の谷作品については残念ながら語れない。だが、今年に入って彼の新作『ヌードマウス』『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』を立て続けに観て、私は心地よく驚かされた。

帰り道でいろいろ思った。家族間の微細な心理を扱いながら、どの瞬間も強固な立体になっていた。それが、細部と全体を交互に見せながら、ゆっくりと回転しているような感じ。なぜ、あんなになめらかに、時間を行き来できるのか? 男性が、男性らしく(?)「お母さん」を演じてもおちゃらけになってしまわないのは、なぜだったのか?

そうか、あれは斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体だ。谷クンは翻訳も手がけるから、古今の劇構造に習熟しているのかも。まだ埋蔵量があるね、この人は……あの夜のつぶやきは、演劇界の新たな兆への胸騒ぎだったかもしれない。

谷クンの挑戦、『完全版・人間失格』は見逃せない。

永井愛(劇作家・演出家/二兎社主宰)

クレジット

キャスト

東谷英人、大原研二、塚越健一♡、中村梨那、堀奈津美、百花亜希、若林えり(以上DULL-COLORED POP)、川村紗也(劇団競泳水着)、熊川ふみ(範宙遊泳)、コロ♡、孔大維コン・テユ、西郷豊(The Dusty Walls)、原西忠佑♦、細谷貴宏(ばけもの)、堀川炎(世田谷シルク)、村上誠基♦
※「♡」は女バージョン、「♦」は男バージョンにのみ出演する俳優です。

スタッフ

作・演出 谷賢一(DULL-COLORED POP)
原案 太宰治
会場 こどもの城 青山円形劇場
日程 2012年11月1日(木)~11月7日(水)
スタッフ 舞台監督:村岡晋 美術:土岐研一 照明:奥田賢太(colore) 音響:上野雅 DJ:堀雄貴(犬と串) 映像:三ツ井春伸(SGB) 宣伝美術:山下浩介 演出助手:元田暁子(DULL-COLORED POP)、港谷順 制作:藤井良一(江古田のガールズ)、武藤香織
主催 DULL-COLORED POP
提携 こどもの城 青山円形劇場(担当:劇場事業本部 志茂聰明)
協力 Art Revival Connection TOHOKU、アトラプト・カンパニー、劇団競泳水着、ゴーチ・ブラザーズ、zacco、The Dusty Walls、世田谷シルク、ばけもの、範宙遊泳、(株)ワーサル、ワタナベエンターテインメント

タイムテーブル

本公演では、コロ主演・女葉蔵バージョンと、原西主演・男葉蔵バージョンの2バージョンございます。間違えないようにね!

11/01(木) 19:30~[女]
11/02(金) 19:30~[男]
11/03(土) 14:00~[男]☆、19:30~[女] ☆14時の回終演後、ロングアフタートークあり!
11/04(日) 14:00~[女]、19:30~[男]
11/05(月) 19:30~[女]
11/06(火) 14:00~[女]、19:30~[男]
11/07(水) 14:00~[男]
[女] … コロ主演、女葉蔵バージョン。コロ、塚越健一の2人は[女]のみ出演。
[男] … 原西主演、男葉蔵バージョン。原西忠佑、村上誠基の2人は[男]のみ出演。
開場は開演の30分前です。

会場:こどもの城 青山円形劇場

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-1
TEL 03-3797-5678

ご挨拶

JR渋谷駅・東口、宮益坂側出口より徒歩10分
表参道駅(地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線・営団地下鉄)、B2出口より徒歩8分。

会場地図

Aoyama First Act
劇場内写真こどもの城 青山円形劇場では、「Aoyama First Act」を通じ、円形の特性を生かせる企画を持ちながらも、今までに公演を実現できなかった才気と熱意ある若手劇団及びパフォーマンス集団と共に、新しい演劇の創造を目指します。

チケットご予約・お問い合わせ

チケット

前売:3,500円 当日:4,000円

学生:500円割引(要学生証提示) リピーター:1,000円割引(要半券提示)
※リピーター割引は、男バージョン・女バージョン関係なくご利用頂けます。「男女バージョン両方観たい!」というお客様は、是非ご活用下さい。

ご予約方法

2012年10月3日(水)10:00より、チケット発売開始! チケットぴあ、イープラス他にて取り扱い。もうちょっとしたら、詳しく書くのでお待ち下さいませ。

チケットぴあ
ウェブ: http://bit.ly/dcpop12-pia
お電話:0570-02-9999(Pコード:424-476)
店舗: セブンイレブン、サークルK・サンクス、チケットぴあ店舗にて取り扱い
イープラス
ウェブ: http://bit.ly/dcpop12-eplus
店舗:インターネット、ファミリーマート店内ファミポートにて取り扱い
お問い合わせ先

info@dcpop.org / 080-1074-5925(制作・藤井)

ワーク・イン・プログレス開催!

ワーク・イン・プログレスとは、「製作途中の作品内容をお客様に公開し、観客の視点や意見を取り入れることで作品をよりよいものにしよう!」 というものです。今回、10/20(土)・21(日)の2日間、ワーク・イン・プログレスを実施! 通し稽古を公開し、お客様の視点や意見を取り入れて、作品を育てます。

内容
10/20(土) 19時~22時くらい コロバージョン
10/21(日) 19時~22時くらい 原西バージョン
場所
都内某所稽古場(池袋よりちょっと北の辺り。ご参加者にのみご連絡致します)
参加費
無料
申し込み方法
info@dcpop.orgまで、以下の項目を書き添え、ご連絡下さいませ。弊劇団からの返信を持ってお申し込み完了となります。10/20・21両日ともに定員10名まで。
(1)お名前 (2)ワーク・イン・プログレス参加希望日時 (3)枚数 (4)携帯電話番号 (5)メールアドレス(PCメール受信できるもの)
予約開始
10/3(水) AM10:00~
※これより以前のお申し込みはお受けできません。定員に達し次第受付終了。
注意事項
写真撮影・録画・録音など固く厳禁とさせて頂きます。スケッチ、メモ、彫刻、版画などによる記録は、全然構いません。
衣裳、小道具、音響、照明、映像などがない状態での通し稽古になります。「何かしょぼく見えるな」と思ったとしたら、それは気のせいです。
で、で、できれば、チケットを、予約してから、来てくれると嬉しいな……。
ワーク・イン・プログレスと本番観に来てくれるだけで超・超・超・超ハッピーなので、差し入れの類は一切ご遠慮させて頂いております(と言う風に書くと、「なるほど、前フリだな」と曲解して買ってきて下さる方いらっしゃいますが、違います。本当に結構です。恐縮しちゃうので!)


かつての稽古風景(DCPOP10『Caesiumberry Jam』)

ロングアフタートーク開催!

11/3(土)14:00開演の回の終演後、Project BUNGAKUの4人が再集結し、作品&太宰治について40分のロングアフタートークを開催! Project BUNGAKU中に大喧嘩を繰り返し、ジャンプ漫画よろしく固い友情と厳しいライバル心を抱いた4人の演出家が、40分という長丁場(延長の可能性あり)、語り尽くします。

出演:松枝佳紀(アロッタファジャイナ)、広田淳一(アマヤドリ)、吉田小夏(青☆組)、そして当然谷賢一(DULL-COLORED POP主宰)

顔写真
松枝佳紀、広田淳一、吉田小夏、谷賢一

あれこれQ&A

お客様から寄せられたご質問などにお応え致します。

Q. 上演時間はどれくらいですか?
A. まだ稽古の序盤ですゆえ確かな時間をお伝えすることはできかねますが、80~100分程度を予定しております。(9/29)
10/25(木)の通し稽古で、全体の通し時間、1時間54分でした。
Q. 男版と女版って、内容は同じですか?
A. 稽古開始時点では台本は同じです。その後、出演者の癖や個性に合わせて、若干テキストを修正する場合があります。演出も俳優に合わせて若干変更する予定ですが、「がらっと変えてやるぜ」みたいな意図は今のところありません。
と、言いつつ、両バージョンご観劇希望の声をかなり耳にしていますので、変えたくなってきた最近です。(9/29)
と、思っていましたが、やっぱりかなり変わりそうです。特にダブルキャストの部分は、随分違う印象に仕上がりそうです。(10/5)
Q. 今回の客席は完全円形だそうですが、見やすい席や、見やすいブロックはありますか?
A. 「自分の座ったブロックは、観づらかったな」と思うお客様が一人も出ないよう、演出しています。その分、座る席によって見える風景は随分違いますので、複数回ご覧になるお客様は、ご予約の際に違う席を選ぶのも一興かと思いますので、お試し下さいませ。
また、最前列は俳優の表情が見やすく、後ろの方は全体が俯瞰できて、どちらも面白いはずです。今回、一番後ろの席でもかなり舞台面に近い配置になっているので、心配はいらないと思います。
Q. リピーター割引ってどう使うんですか?
A. 2回目以降のご観劇の際、受付に前回ご観劇時の半券をご提示頂くと、その場でキャッシュバック致します。ですので、プレイガイド等で複数回事前にご予約頂き、事前にお支払い頂いたお客様でもご利用頂けます。
主演違いの二バージョン、両方ご覧頂くもよし、せっかくの円形劇場、違う席、違う角度から観直すもよし。是非ご活用下さいませ。
Q. ワーク・イン・プログレスって、完全な素人でも参加できますか? 専門用語とか、わからないんですが……。
A. ぜんぜん問題ありません。今回のワーク・イン・プログレスの狙いは、お客様のご感想や疑問などを伺って、それを演出家や俳優が今後の創作に活かす、というものです。ですからむしろ、「よくわかんなかった」「ここは面白かった」「ここびっくりした」など、率直・素直でストレートな感想ほど、ありがたいです。
劇団・出演者側で専門用語など使う場合もあるかもしれませんが、そういう時は、「ハイ先生、わかりません」と手を挙げて頂ければ、丁寧にお答え致します。
Q. ワーク・イン・プログレス参加したいんですが、人前で喋るのが苦手です。黙っててもいいですか?
A. できれば一言、「面白かった」でも「つまんなかった」でも、その場で聞ければ幸いですが、「いやマジ本当ムリです勘弁して」「でも稽古は超観たい」という場合、紙にでも書いて渡して頂くか、後日メールなどでお伝え頂いても構いません。
Q. ワーク・イン・プログレスの申し込みは先着順ですか?
A. 基本的に先着順ですが、短時間の間に応募者を大幅に超過した場合は、抽選とさせて頂く場合がございます(募集開始と同時に数十通のお申込みがあった場合など)。

作・演出コメント

2年前、短編作品として発表した時から、いつかロングバージョンをやりたい、この密度とスピード感を持ちながら、一時間半なり二時間なりを疾走することができたら、さぞ面白かろう。と思っていて、思いのほか早く、実現しました。会場は、ずっとずっとの憧れの土地、青山円形劇場という至福の劇場。

初演で「こいつしかいない」と即オファーしたコロちゃんは続投。そして、「でも、せっかくだし、全然ちがう新しいのも作ってみたい」という欲望を満たすため、仙台で出会い、東京で観劇し、夜の早稲田で飲み語らった、原西さんを男葉蔵としてお呼びすることに成功しました。原西さんは僕が観たお芝居でひょうひょうとしたイケメン・切れ者を演じており、あぁこの人うまいしカッコいいなぁ、と思って飲み屋で会ったら、ものっそい草臥れたドロドロの顔でビール飲んでて、ぶっちゃけ舞台上の方が50倍くらいカッコいいなと思いました。褒め言葉だから言うわけですけど。

葉蔵役の二人以外にも、こないだ一緒にリーディング作品やってナイス感触だった劇団競泳水着の川村紗也ちゃん、観る度に「あのひとやばい、あわわわ」と歯の根が合わぬほどの衝撃をくれる範宙遊泳の熊川ふみちゃん、観に行くたび俳優としても演出家としてもワクワクする演劇を見せてくれる堀川炎ちゃん、という客演美女軍団に加え、まるまる太った西郷さんに、へんてこにユニークな演技を見せる若人・細谷くん、職人のように丁寧にお芝居に挑む怪優まーくん、そしてイケメンだけど影だらけのテユくん、そしてお馴染み劇団員一同、葉蔵の野郎を地獄に突き落とす布陣は綺麗に整いました。あんまり稽古が好きじゃない僕ですけれども、今回の稽古は楽しそう、刺激的そうです。

「青山円形なんて不安だよ、どうしよう」と相談したら、永井愛先生が文字通り愛のあるコメントを寄せて下さいました。このサイトではピンク色っぽくしてやりました。ご自分も稽古で超多忙なのに、嫌な顔一つせず快諾してくれるその姿勢に、いたく感激いたしましたよ。

フライヤーは山下浩介さんに、「あんまりお行儀よく作らないで欲しい」「この劇団大丈夫かな、って感じる、意味不明な要素とか破綻を入れてくれ」と頼んだら、こういうことになりました。飛び回っているのはスペルマではなく人間の魂、東京を彷徨う現代人の孤独の魂だと、私は信じております。モデルの2人も使用済みコンドーム持って写真に載っているので、探してみてね。

ワーク・イン・プログレスをやる、ってのも、我が劇団としては異例のことです。今までも稽古場公開はよくやっていましたが、ショーウィンドウ越しに蕎麦屋が蕎麦打ち公開するようなもので、意見や感想を求めたりということは一切なかったのですね。今回は、本番一週間前にワーク・イン・プログレスをやって、きっちり観客の評価にさらすことで、盤石の初日を迎えたい。と思って、やっております。お客様気分ではなく、コラボレーターのつもりで来て下されば幸い。

ロングアフタートークでは、この作品の初演版が上演された「Project BUNGAKU」の4人が再結集、という触れ込みになっていますが、そんなことはどうでもよろしくて、ただ連中と、太宰治について、演劇について、久々じっくり、喋ってみたいと企画しました。広田さんとはたまにアフタートークなどなどで喋るのですが、その度ごとにタイムリミットを大幅オーバーしてしまうので、「なら最初から長くしてやろう」と40分枠ということに致しました。かなり濃い、談義ができると思います。みんな、2年前、半年以上は太宰治とじゃれあった面々です。

この原稿を書いている9月末時点では、台本の段階でかなり初演とは違うものに仕上がりつつあります。初演の良き所を残し、踏み込みの浅かったところをきちんと踏み込む。苦労していますが、円形舞台を、音響、照明、映像と、集団演技でナブり殺す、というイメージは、想像するだにとても楽しく、スリリングな観劇体験をお約束致しますよ。

谷 賢一(DULL-COLORED POP)


フライヤー撮影中のカメラテスト写真(被写体:谷賢一と新宿の夜)