DULL-COLORED POP

座・高円寺 冬の劇場26 劇作家協会プログラム  DULL-COLORED POP vol.15


2015/2/5(木)~2/15(日)@座・高円寺1

公演概要

チラシ表 チラシ表

「吾輩は、夏目家三代目の猫である。名前はやっぱり、ない。
 初代はともかく、二代目、三代目と名前をつけぬ。家人も誰も構ってくれない。放っといてもらう方が気が楽だから不満があるでもないのだが、一体全体、飼う気があるのか、甚だ疑問だ。
 この間など、よしここは一つ愛玩動物らしいところを見せてやろうと、主人の膝の上で甘えてみた。すると「抜け毛が酷い、病気だろう。クロロホルムでも嗅がせて殺してやった方が苦しまなくて幸せだ」などと言う。全く人間ほど不人情なものはない。殺されるのも癪だから、せっせと食事し運動して病気を治した。すると今度は主人の方が体を壊して寝込んでしまった。どうやらそろそろ死ぬらしい。身勝手な奴である。
 胃病だから食事を控えろと言うのに、人の目を盗んで布団を這い出て、戸棚からジャムを舐めたり、お見舞いの饅頭を盗み食いしたりと子供のようだ。そうして隠れて食っておいて、五分と経たず血と一緒に吐き出して、余計に体を弱らせている。ご夫人が心配してたしなめると、怒髪天を突く勢いで怒鳴り散らす。弱っているので怒鳴るだけだが、吾輩はよく知っている。昔はよく殴っていたものだ。ご夫人や、子供らを。
 こんな奴でも死ぬとなると、先生、先生と言って人がぞろぞろ集まってくる。誰も彼も、この男の正体を知らぬらしい。日本を代表する国民的作家、漱石先生と呼ばれているが、何のことはないただの人だ。いいや、人より、さみしい人だ。誰よりもさみしい、一人ぼっちの。そこは吾輩が一番よく、知っている」──

知ってるようでよく知らない、夏目漱石の人となり。三十代半ばで文学者に転身し、孤独、軋轢、すれ違い、そして三角関係の恋を描き続け、どうにかこうにか「さみしさ」を生き抜いた心の奥底を猫と一緒に覗き込む、DULL-COLORED POPの最新作です。

日程
2015/2/5(木)~2/15(日)
作・演出
谷賢一(DULL-COLORED POP)
出演
東谷英人、塚越健一、中村梨那、堀奈津美、百花亜希、若林えり(以上、DULL-COLORED POP)、大西玲子(青☆組)、木下祐子、西郷豊、榊原毅(三条会)、佐藤誓、西村順子、前山剛久、山田宏平、渡邊りょう(悪い芝居)
スタッフ
舞台監督:竹井祐樹 美術:土岐研一 照明:木藤歩 演出助手:畑田哲大、元田暁子 宣伝美術:西野正将 休場:大原研二 制作:福本悠美
主催
DULL-COLORED POP
後援
杉並区
提携
NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

タイムテーブル

5(木)6(金)7(土)8(日)
14時
19時
9(月)10(火)11(水・祝)12(木)13(金)14(土)15(日)
14時休演日
19時

◎ … 2/5(木)・6(金)はプレビュー公演・一律3,000円

アフターイベント開催決定!

アフタートーク ゲスト:夏目漱石×谷賢一(DULL-COLORED POP)
2/9(月)19時の回終演後、漱石先生のお誕生日を記念して行われるスペシャルトークです。
※漱石先生がお見えにならない場合、谷が一人でアフタートークをお送りします。

その他、随時公開予定!

会場

座・高円寺1

東京都杉並区高円寺北2-1-2
(JR中央線・高円寺駅北口より徒歩5分)

チケット

12月14日(日)一般発売。全席指定

一般発売に先駆け、12月初旬に劇団先行を実施!
劇団先行でお申込み頂くと、ここでしか手に入らない○○済○○○が付いてくる!? 先行発売のご案内をご希望の方はinfo@dcpop.orgまで(1)お名前(2)電話番号をご連絡下さい。11月末に先行予約のご案内をメールでご連絡致します。

ご予約

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DULL-COLORED POP
https://ticket.corich.jp/apply/61182/inf/
座・高円寺チケットボックス
03-3223-7300(TEL10:00~18:00・窓口10:00~19:00、月曜定休)
座・高円寺WEBチケット
https://www.e-get.jp/za-koenji/pt/
チケットぴあ
http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1454793
0570-02-9999 Pコード:441-536

作・演出の言葉


作・演出:谷賢一
(写真のネコミミは合成ではありません)

楽しく愉快で、しかしさみしい

いつか上演、してやろうと思っていた。当時25か、6。文章でまとまったギャラをもらうのは生まれて初めてだったから、まさに全力投球で、書いて、渡した本だった。今の自分が読み返してもすぐには思い出せない程にマニアックな知識やネタが引用されていて、凄まじい量の下調べをしたことがわかる。25歳の自分に会ったら、肩を叩いて「お疲れ、よく頑張ったよ」と言ってやりたい。

しかし、生硬。若書きとは言わないが、生硬。生硬とは「文章などが未熟で堅苦しい様」を言う言葉だが、これほど「生硬」という表現が似合う作品もない。実によく調べてある、調べ抜いた、しかしその分、硬いのだ。もったいないったらありゃしない。25歳の自分に言ってやりたいことが、もう一つできた。「調べたら、忘れて書け」。お客は夏目漱石の百科事典を観たいんじゃあない。

そんなもったいない生硬さの中で、二人だけ、いきいきしてる人物がいた。いや一人と一匹と言うべきか、片方は猫である。その猫だけは自由に、ラクに息をしていて、今読んでも楽しく、かわいく、面白い。おまけにちょっと、さみしい感じもする。──もう一人が誰なのかは重大なネタバレになってしまうので書けないが、この人物も実によく書けている。実にさみしく、書けている。

うまく書き直せそうだとわかって、上演を決めた。さらなる批判ご意見ご感想は、お客様から頂くつもり。

夏目漱石は愉快に、さみしく、生きた人だ。家族と弟子とたくさんの猫たちに囲まれて、しかし誰にも触らせない、さみしさを秘めて死んだ人だ。楽しく愉快で、しかしさみしい。そんなお芝居にするつもり。

お運び、お待ちしております。

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