東谷チーム座談会

──では順番に自己紹介からお願いします。

荒木:荒木秀行(あらきひでゆき)です。ゆき男役です。
椎名:椎名一浩(しいなかずひろ)です。よし子役です。
柴田:柴田美波(しばたみなみ)です。とも美役です。
高橋:高橋奏(たかはしかな)です。黒猫役です。
田中:田中あやせ(たなかあやせ)です。まち子役です。
福冨:福冨宝(ふくとみたから)です。茶猫役です。
細川:細川洋平(ほそかわようへい)です。高梨役です。
横田:横田雄平(よこたゆうへい)です。けん太役です。

──稽古場の雰囲気はいかがですか?

田中:和やかだよね。
福冨:椎名くんが、ボケ倒して、ボケ倒して……。
椎名:変なこと言わないでー。雑談が多いですよね。
田中:雑談、多い。好きな食べ物の話とかしてます。
椎名:あと咀嚼音の話。
田中:好きな音についてとか。
荒木:まるで稽古をしてない人たちの会話みたい。
椎名:咀嚼音フェチとか、納豆はめっちゃ好きとかね。
細川:うん。
福冨:納豆は何に合うか? とか。
細川:何で、みんなそんなに雑談しているんだろうと、僕は思ってます。
一同:(笑)
高橋:裏切り者(笑)。
福冨:ちなみに細川さん、写真を撮るタイミングがいつも変です。
細川:うまく撮れないんだよね。
横田:こういう感じの雰囲気です。
椎名:かしましい雰囲気があるよね。

──仲良いのですね?

田中:仲いい……。
柴田:何で、そうですか? みたいな雰囲気(笑)。
田中:40’S(チーム内の40代二人)。
荒木:ちょっと、やめてもらえませんか?(笑)この二人だけ仲悪いみたいなの。
椎名:男性陣は静かですよね。
高橋:(椎名)男性に入ってないよ。
椎名:入っているの、入っているのですが……。

──皆さん全員、初対面?

福冨:ほぼ、そうです。
椎名:何か、ちょっとだけ面識はある人はいますけど。
荒木:細川君と私は、10年ぐらい前に共演しています。

──東谷さんの演出についてはいかがでしょうか?

椎名:さて来たぞ、これ。何か悪口言えって言われてて……。あえて言おうかな? というぐらい何か、出てこないなって。
福冨:けっこう何か、フィードバックが多いですね。1シーンやってみて、どう思った? どう感じた? という事を聞いて、対話形式なので、みんなで喋ることが多くなって、かしましい雰囲気になっているんだと思います。
田中:一方通行ではなく常に受け身ではないので、どうだった? と聞かれて、キャッチボールな感じです。
椎名:英人さんも初めて演出されるから、演出しながら発見しながら「これ、いいな。このワード、いいな」って、やっているから楽しいです。
荒木:あと夢出し。
一同:あっ、そうだ夢出し、ダメ出しじゃなくて。
荒木:こうなればいいな。
椎名:それで、僕らが叶えていきましょうという。
福冨:実現していきましょう。と言って、めちゃめちゃ体育会系です。

──夢出しって、谷さんが言い出した言葉ですよね。

椎名:僕は新国立劇場研修所出身で谷さんから講義を受けた事があって……。英人さん、谷さんナイズされているなと思って、動きとかも。
田中:(笑)動きも! 初めて知ったー。常に受けて見ているから伝染っちゃうというのもありますよね。
福冨:めちゃめちゃ、気を使ってくれます。休憩、大丈夫とか。次、行く? どうする? このシーン、やりたい? どうするみたいな。
椎名:いつも細川さんが、オチに使われているという。
細川:だいたい、そうですね。
荒木:この間、稽古で1場からやっていて、4場だけ1回で終わった。わりと他のところは、もう一回やる? やりたい? とか聞いてくれるのに、4場はいいでしょ? あれ、4場は終わるんだ。
一同:出来るでしょ、大丈夫でしょみたいな。
横田:すん! みたいな。
椎名:おもしろいのが、いろいろ言って、あー、いいじゃん、いいじゃん。とか言って、ほんとに分からないときは、よく分からないと言うこと。
田中:素直なんだよね、はっきりしていて分かりやすい。曖昧なことはないね。
柴田:役者としての軸が、しっかりあるから、何か、そういうのも見られておもしろい。
福冨:めちゃめちゃ自由度が、高くないですか? 例えば、こうやっていいもんですかね? と質問したことに対して「あー、やってみて」と言われて、我々も挑戦しがいがありますね。
高橋:「それはダメとは言いません。」とは言われています。
椎名: 最近は「すいません」「ごめんなさい」がないし。
田中:「言ったら殺す」と言っています。
椎名:それが稽古なんだから、安心してほしい。
福冨:こんな感じです。

──チラシにもありますが「幸せって何かしらねぇ。」と皆さんに聞いているのですが?

荒木:(笑)
一同:急だな、難しい、みんな黙っちゃった。
荒木:急に、すごい座談会になる。
福冨:(横田にふって)幸せって何ですか?
椎名:雄ちゃん(横田)、しゃべんないから。
横田:幸せって何ですかね。でも何か、この戯曲を読んでやって、家に帰ったりすると、僕、母親に優しくなった気がします。
荒木:(笑)
横田:母親というか、両親。親子とか家族って何だろうな、すごく考えるものであって、だから家に帰った時に、おはようとか、いってらっしゃいとか、ちゃんと言ってなかったんですけど言うようになりました。
一同:いい事だよ。
柴田:そこからの幸せって?
横田:そういう、ちょっとした事で幸せを感じるというほどの大げさなことではないけど。
荒木:いやそれは、ご両親は幸せを感じていると思うよ。
一同:感じていると思う。
椎名:常に更新されていくなと思って。
福冨:「あー、幸せとは更新されていく。」by椎名一浩(笑)
椎名:考え続けて、時と場合によって違うと思う。夢が変わってきたりとか。
お芝居の時なんですけど見続ける、関わり続けることによって、多分絶対、見つからないと思う。言えるほうが気持ち悪いと思う。でも言ってもいいんですけど、言っても、多分また変わると思う。
荒木:言いづらくなるよ(笑)。
福冨:じゃあ分かった、人生の幸せではなく、日々の幸せは? 何だろうねという話に変えたらどうですか?
細川:ひとつある。モヤモヤとストレスのある日々を過ごしたあとに、週末に一人で映画館に行って、イスに座って上映が始まるときに「最高……」と思う。映画大好きなんです。
椎名:人の数だけ、幸せがあるみたいな。
田中:また出た名言。
福冨:「人の数だけ、幸せがある」 by椎名一浩。格言みたい。
椎名:他人と書いて、ひと? ひとの幸せを感じられるようになると、幸せかけ算のようになるなあ。
田中:幸せだなって思うことないけど、何かあった時に、こういう時って幸せだったなと、後から振り返って思うなってのがあって、すごい小っちゃいけど幸せまでいかなくても、例えば電車に乗っていて、急に人身事故があって遅延とかあったときに、幸せってほどじゃないですけど、時間通りに着いているのって当たり前だと思っているけど、ある意味幸せじゃないけど良かったんだなと。毎日、朝起きて何事もなく眠れることも幸せだと思ったほうがいいんでしょうけど。それって案外、難しい。そういう何か、起きたときに幸せだったんだなと。過去が幸せだということ。
福冨:楽しい瞬間が幸せという感じ。
一同:(笑)
椎名:ギャルか!
椎名:関係ないかもしれないですけど、子どもと老人を見ている時って幸せなんですよね。
田中:子ども見ている時は確かにー。
椎名:ちょと生に近い存在?
田中:生と死ってこと?
椎名:まあ、そうなんでしょうね。その、すごくかわいいなって
横田:老人の方が見ていられる、おじいちゃんが座っているだけで、もう。
福冨:お酒飲める?
横田:お酒は分からないけど(笑)。
椎名:すごい気持ち悪い話なんですけど。隣に座っているだけで、手をこう(膝の上に載せるしぐさ)やりたいな。
横田:それは、ちょっと分からないけど。
椎名:子どももおばあちゃんも無条件に(膝の上に載せるしぐさ)こうやってやりたいな。
横田:幸せとは何でしょうか?
椎名:荒木さんのが聞きたい。
荒木:俺はお酒を飲んでいる時。
椎名:シンプルなのがいいですよね。
荒木:稽古終わって帰って、ハイボールを飲んでいるときが幸せですよ。
椎名:ご飯って、やっぱり幸せだよね。
高橋:あったかいご飯を好きな人と食べている時間みたいな。別に異性じゃなくても。
椎名:食って、やっぱり大事だな。お料理して出来たよーって。
荒木:料理するの?
椎名:僕、すごいしますよ。いま家に、お友達がいるので居候している人がいるんです。朝ご飯をつくって弁当持たせて。
荒木:弁当も作っているの!?
一同:えーっ!!
福冨:お母さんみたい。
荒木:友達に? すごいな。
椎名:あの宿泊費としてお金を貰っているし、一人分作るのも二人分作るのも一緒だなと。
田中:それって幸せですね。劇中のセリフであるじゃないですか、「自分のために作るお味噌汁なんて嫌だわ。気持ち悪い」って、人に作ってもらった料理って美味しく感じるし。自分が自分のために作るものって、何作るか分かっているのもあるけど、何か味気ない。誰かのために作るとか、そういうのがやっぱり幸せ。自分で作ったものでも、人と一緒に食べて共有できるというのが幸せですよね。
椎名:小学生の遠足でお弁当食べるとき、開けても自分が作ったからつまらないですよ。
田中:あーっ。
福冨:小学生のときも?!
田中:偉い!
高橋:いや、でも分かる。私も中高、自分でお弁当を作っていて、お母さんのお弁当の思い出がなくて。
椎名:ない!
高橋:それが寂しいなと思う。
椎名:たまに、すごい作ってくれるときがあって、僕、泣きましたもん。だから友達とかが嫌いなもの入れるなと言っただろうババァて聞くと、全力で殴りたくなる。それで、ケンカしましたもん、友達と。
田中:何で、そんな事言うのってこと?
椎名:そう、お母さん作ってくれたでしょ。と本気でケンカしましたね。
荒木:それ友達はウザかっただろうな。まだ中高生に、その気持ちは分からなかったと思うよ。
福冨:うーん、きっとね。
荒木:今は分かるけど、当時の友達は、コイツ何だよーって。

柴田:台本を読んでいて、幸せって、角度によって違うなと思いますよね。生き方によって、役それぞれもそうだし。幸せって思っていることが幸せじゃないとまで言わないけど、違う言葉にハマっちゃうなと思いながら読んでるし。
田中:幸せって思っている事が、人からの押しつけみたいな?
柴田:椎名くんから見たら、お弁当作ってもらえる人って幸せじゃんと思う。いつも食べている人からしたら、何だこの飯みたいな感じで変わってくるみたいなのあるよね。
荒木:その時に分かってあげれればいいけどね。
柴田:そう、それだったらいいけどね。
高橋:それこそ、さっきの話で過去のことね。
田中:過去が幸せだったんだなという。過去に対してのほうが幸せだなって思う。振り返れるから、今になって分かる。
荒木:ごめんね、早いね。
福冨:うーん。
高橋:そういう歳じゃないよね。
荒木:俺たち40’s(荒木、細川の40代ふたり)が言うなら分かるよ。
田中:いや何か、みーちゃん(柴田)のお弁当を見ていても、あっ中高生のときのお弁当って、めちゃめちゃありがたかったんだなと思う。
荒木:えらいね、そういう事に気づけるの早いね。
福冨:そういう感謝も感じたりするけど、パッと浮かんだものが三浦大知のライブを観たあとって幸せだな、としか思い浮かばない私はもっと精進しようと思いました。
高橋:好きなものって、そうね、分かる。
椎名:僕、好きなものを見つけるのが苦手だった時期があって、最近、その幸せを知ったんですよ僕。グッズ集めているときとか。
細川:何のグッズ?
椎名:いや、あっ、ちょっと。
横田:何で隠すの?
田中:それも、そうだけど、(細川の)突然の反応も怖すぎる(笑)。
椎名:いや好きな野球選手がいて……。
荒木:言っちゃってるじゃん。
田中:(細川に対して)収集癖あるんですか? すごい、グイグイ来たけど。
細川:いや、あの集めている人の何を集めているのか聞くのが好き。
一同:(笑)
椎名:何、それー。
柴田:それ幸せ?いろいろな形があるんだねー。
福冨:あとで、みんなで、ひとつずつ披露しよう。
田中:これで、また仲良くなったね。
荒木:後でというか、他に収集しているものがある人いるの?
福冨:アハハ、ないでーす。
横田:終わり。
柴田:こんな感じです。
椎名:いま、ちなみに幸せとは何かという話?
福冨:もう、まとまったんじゃないですか? あやせのやつで。
椎名:最後に聞きたいことで1週間ちょいやって、どういうねこちゃんにしたいのか? と、みんなから聞きたいな。
福冨:どんなシーンでも、ぶつかり稽古じゃないですけど。ぶつかってお互いをあげていかないと、おもしろくないなと思って、昨日の稽古で言葉で勝負するというワードが出たと思うんですけど。勝負という熱量ぐらい、何というか、めっちゃ汗かくじゃん、この会話劇みたいな。そういう体育会系みたいにしたいなと思ってます。
柴田:とにかく相手を大事にする。
椎名:自分で言っていて思いつかない。
高橋:昨日思ったんですけど。台本を読んでいて、これ自分がどうとかじゃなくて、やっぱりお客さんが観ていて、どこに感情移入するか? によって、誰に感情移入するか? によって、全然違うお話になると思う。受け取り方が違うなと思って、それで自分の観た人が家族を想い、それこそ「おはよう」って言ってみるとか、そういう何かを受け取ってくれたらいいなと思いました。
椎名:漠然としちゃうんですけど、もちろんずっとお芝居を続けるかやめるか分からないですけど。絶対、忘れられないものにしたいなと思って、一生のなかでこの芝居、この祭りで4チームあって4演出あって、関係あるかないか分からないですけど。絶対、私の人生で、あれが必要だったとか、なかったらいま違ったなと言える作品とか公演にしたいと思っています。
柴田:賛成ー。
細川:それぞれ違うキャリアを歩いてきた人が集まっていて、そのなかで僕は僕なりに、これまでとこれからの、結節点になるような作品にできたらいいなと思っています。凝り固まった視野をほぐして広げて、この先いろんな方向へ向いていけるような、自分にとってそんな作品にならないといけないなと思いながらやりたいと思います。
横田:賛成。
田中:この物語に出てくる人たちみんなに、それぞれが思う正義があって、その正義がしっかり伝わるものになったらいいなと思っています。
荒木:家族それぞれが抱えているものっていうのを、観ているお客さんに感じてもらえれればいいなと思います。
横田:みんな楽しんでね。

──以上になります。ありがとうございました。